猫のストルバイトはDLメチオニンで防ぐ?

今すぐ止めたい猫の「DL-メチオニン」の怖さ

猫の尿路トラブルについて調べると、よく出てくる成分があります。

DL-メチオニンです。

多くの尿路ケアフードや療法食に入っているため「ストルバイト対策には必要なもの」と思っている飼い主さんも多いかもしれません。

実際、DLメチオニンにはきちんとした役割があります。

大切なのは、「良い・悪い」で判断することではなく、体の中で何が起きているのかを理解することです。

DLメチオニンは猫に何をしているの?

DLメチオニンは、もともと猫に必要なアミノ酸「メチオニン」をもとに作られた成分です。

フードの中では主に、尿を少し酸性側に調整する目的で使われています。

猫の尿は、性質によって結晶ができやすくなったり、できにくくなったりします。

ストルバイトという結晶は

・尿がアルカリ性に傾くとできやすく
・弱い酸性ではできにくい

という特徴があります。

DL-メチオニンは体の中で分解されると酸性の物質になり、猫の尿が弱酸性へ近づきます。

 

メチオニンは猫の獣医療の大きな進歩

猫の尿路結石の多くがストルバイト結石です。

研究が進む中で

・尿の性質
・尿の濃さ
・食事内容

が結晶に関係していることが分かり、尿を弱酸性に保つ食事が作られるようになりました。

 

猫にとっての「ちょうどよい範囲」

猫の尿の管理で重要なのは、「酸性なら良い」という単純な話ではありません。

尿はアルカリ側に傾きすぎても、酸性に傾きすぎても問題が起こります。

実際、尿を強く酸性にする食事が広まった後、別の種類の結石(シュウ酸カルシウム)が増えたことが報告されています。

 

猫の尿路結石は「尿の性質」だけで決まらない

現在では、猫の尿路結石ができるかどうかは次の組み合わせで決まると考えられています。

・尿の性質(pH)
・尿の量
・ミネラルの濃さ

特に大きな影響を持つのが「尿の量」です。

尿量が少ないと、尿の中の成分が濃くなり、結晶ができやすくなります。

逆に尿量が増えると、成分が薄まり、結晶はできにくくなります。

 

なぜ猫の尿路結石に食事が関係してくるの?

猫はもともと、水をあまり飲まない動物です。

猫は獲物から水分を摂ることで体のバランスを保っています。

食事の内容が変わると、

・体の代謝のしかた
・尿の量
・尿の濃さ

が自然に変わります。

これは薬の作用ではなく、体が本来持っている反応です。

そのため尿路ケアでは、特定の成分だけでなく、食事全体を見ることが大切になります。

猫に生肉を与えるとが尿の環境が変わる

猫は本来、獲物を食べて生きてきた動物です。

自然な食事には次の特徴があります。

・動物性タンパク質が中心

・水分を多く含む(約70%前後)

この2つは、尿の環境に大きく関係します。

まず、動物性タンパク質は体内で代謝される過程で、自然に酸性側へ傾く代謝産物を生みます。

これはDLメチオニンのように特定の成分で尿を調整するのではなく、食事全体の代謝の結果として起こる生理的な変化です。

さらに重要なのが水分量です。

ドライフードの水分量は約10%ですが、

生肉など水分を多く含む食事では自然に水分摂取量が増えます。

水分摂取量が増えると、

・尿量が増える

・尿中のミネラル濃度が下がる

・結晶ができにくい状態になる

ことが知られています。

尿石形成は「尿の中の成分がどれだけ濃いか(過飽和状態)」に強く影響されます。

生肉中心の食事では

・自然な代謝による弱酸性尿

・十分な水分による尿の希釈

が同時に起こります。

特定の食材が病気を治すという意味ではないです。

猫の体の設計に近い食事ほど、体が本来持つ調整機能が働きやすくなるという理解になります。

DLメチオニンの位置づけ

DLメチオニンは、尿を弱酸性に保つことでストルバイト管理を助ける成分です。

実際の管理では、

・水分摂取量
・食事全体の構成
・排尿の状態

をあわせて考える必要があります。

尿を酸性にし続けることのもう一つの視点

DLメチオニンによる尿酸性化は、ストルバイト管理において有効な方法のひとつです。

一方で、尿環境は単純ではなく、酸性化が長期間続いた場合に別の変化が観察されることがあります。

疫学研究では、尿酸性化食の普及後、

ストルバイト結石の減少と同時に、シュウ酸カルシウム結石の増加が報告されています。

シュウ酸カルシウム結石はストルバイトと異なり、溶解することができません。

現在では、

尿を単に酸性へ傾けるだけではなく、尿量・水分摂取・ミネラルバランスを含めた総合的な管理が重要と考えられています。

尿環境は常にバランスで成り立っており、一方向の調整が別の環境変化を生む可能性があるのです。

 

猫の尿路の健康とDLメチオニン まとめ

猫の尿は

・尿の性質
・尿の量
・食事内容

といった複数の要素のバランスで保たれています。

大切なのは、ひとつの成分だけを見ることではなく、猫の体全体の働きを理解することです。

猫は言葉で説明してくれませんが、トイレの様子や体調の安定という形で、小さな変化を教えてくれます。

その変化を丁寧に見ていくことが、いちばん自然でやさしい尿路ケアにつながります。

DLメチオニンは、尿を弱酸性に保つことでストルバイト管理に役立つ成分です。

一方で、猫の尿環境は単純ではありません。

尿の状態は

・尿pH

・水分摂取量

・尿の濃さ

・食事全体の代謝

といった複数の要素のバランスで成り立っています。

現在では、尿を一方向に調整するだけでなく、猫の体が本来持つ調整機能が働きやすい環境を整えることも重要です。

猫はもともと、水分を多く含む、動物食べる食事をしてきました。

生肉など水分を多く含む食事を取り入れることで、

・自然な代謝による弱酸性尿

・十分な水分による尿の希釈

が同時に起こり、尿環境が安定します。

これは特定の食事が病気を治すという意味ではなく、猫の体の設計に近い環境を作るという考え方です。

大切なのは、成分を足し続けることではなく、その猫にとって無理のない形で尿環境を整えていくこと。

もし現在の管理方法に迷いがある場合は、急に何かをやめるのではなく、体調や尿の状態を確認しながら段階的に食事を見直していくことが重要です。

猫の体はとても正直です。

日々のトイレの様子や体調の変化が、その環境が合っているかどうかを静かに教えてくれます。

「うちの子の場合はどう考えたらいいんだろう?」

そう感じたときは、その子の体質や既往歴に合わせて個別に考えていくことが大切になります。


 

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参考:
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研究:
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Lekcharoensuk C et al., Journal of the American Veterinary Medical Association (2001)

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