「猫には魚」と思っている方がまだまだ多いようです。
猫、イエネコの起源まで遡ると、猫はもともと砂漠の動物。
猫は体が水に濡れるのを嫌う動物です。
港町で暮らす猫は魚を食べるかもしれませんが、基本的に猫の食事は肉に依存しています。
ペットフードでも海外のものは、魚より肉のフレーバーのほうが多いです。
そんな猫に「煮干し」を与えている飼い主が散見されます。
猫にとって煮干しは食べられないものではありませんが、猫に煮干しを与えるのはあまりお勧めできません。
煮干しは、できたときには酸化している
理由は単純。
「煮干しは酸化しているから」です。
食品がどのくらい酸化しているかを測る数値を「過酸化物価」といいます。
煮干しの原材料であるイワシは、不飽和脂肪酸であるオメガ3のDHA・EPAが豊富です。
このDHA・EPAは抗酸化力も高く猫にとって有益な脂質ですが、大変不安定で酸化しやすく、取り扱いに細心の注意を払う必要があります。
イワシの脂質は煮干し製造中に酸化され、製造直後で過酸化物価が235meq/kgであったという研究結果があります。
ペットフードの場合は
製品に含まれる油脂の過酸化物価が50 meq/kgを超えないこと
とされています。
つまり、煮干しは、どんなに新鮮でもペットフードより酸化している可能性が高いのです。
ペット用であっても、人間用であっても大差はありません。
むしろ無添加の場合酸化防止剤が入っていませんので、酸化しているでしょう。
わざわざ手作りごはんにしているのに、ペットフードより酸化した煮干しの粉を振りかけるのは果たして猫のためになっているのでしょうか。
煮干しは、確かに栄養価が高く、数値だけを見れば猫に良さそうな食材です。
ところが、酸化しやすく良質なものを手に入れるのが非常に困難です。
これが、猫に煮干しを勧めない理由です。
酸化した食品の何が猫に悪いのか
「酸化したものは食べたくない」
「酸化したものは美味しくない」
酸化=体に悪いという意識は大分広がってきています。
ところが、酸化の何が悪いのかを明確に答えられる方はあまりいません。
一言でいうと老化=酸化・糖化です。
食品が酸化すると、タンパク質は変性し、脂質は変敗し、ビタミンは分解され、味や風味が損なわれるだけでなく、栄養価も低下してしまいます。
酸化した脂質を摂ると細胞が正常に機能しなくなり重要な栄養素のやりとりや情報伝達といった、細胞膜の役割が果たされなくなります。
細胞の集合体である臓器の働きも悪くなり、ホルモンの分泌や受容にも支障をきたします。悪い脂質によって生成されるホルモンの質が落ちればそのホルモンを担う生体反応の質もおかしくなって当然でしょう。
また、酸化した食品を処理するために、生体内の抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE、グルタチオンなどが消費されてしまいます。
ですから食品はなるべく酸化させないようにして、摂取すべきなのです。
人間は健康のためよりも、おいしいから、という理由で食材を選ぶことがあります。
それは間違ったことではありません。
でも、猫は自分で食べるものを選ぶことができません。
猫を健康で長生きさせたいと思うなら、酸化したものをわざわざ食べさせるよりも新鮮で酸化していない良質な食材を選んで食べさせることをお勧めします。
魚を食べさせるのなら、煮干しではなく生で丸ごと食べさせるのがおすすめです。
参考文献
煮干 し脂質の性状 とその酸化がだ し汁の風味に及ぼす影響
Effect of Lipid Oxidation on the Taste and Flavor of Dashi-jiru (Broth)
from Niboshi (Boiled and Dried Sardine)
久保加織(Kaori Mukai Kubo)丹羽知佐子(Chisako Niwa)
堀越昌子(Nlasako Horikoshi)的場輝佳(Teruyoshi Matoba)
表示に関する基準案の参考資料
平成20年12月24日環境省・農林水産省
内海聡の内海塾2017年12月1日
【新品】【本】その「油」をかえなさい! 内海聡/著
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